基本理念

自然を守り、自然を活かす

世界的に環境問題が深刻化し森林の減少や劣化が進む現代において、当社が井川社有林をより自然度の高い状態に導き貴重な生物を保護し共生していくことは、当然の責務であると考えます。
一方、現在、井川社有林の尊い自然環境を求め登山や渓流釣りのお客様など年間延べ24,000人の人々が入山しています。当社は尊い自然を保護するだけではなく、こうした人々や自然を満喫する人々をより広く受け入れ、ゆとりと安らぎとを提供することで社会に貢献したいと考えています。

自然資本に係る情報開示

昆明・モントリオール生物多様性枠組の採択を契機に、ネイチャーポジティブに向けた国際的な議論が活発化する中、自然との共生に向けた企業活動とその情報開示の重要性が高まりつつあります。

近年の井川社有林における取組みとしては、2022年9月に「生物多様性のための30by30アライアンス」へ参加を表明、2023年10月には「民間の取組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域(自然共生サイト)」への認定を受けました。参考情報として森林の定量的な経済価値について林野庁が公表する「森林の公益的機能の評価額について」をもとに試算すると次のようになります。

水源涵養 土砂流出・崩壊防止 大気保全・保健休養 野生鳥獣保護 合計
430億円 180億円 56億円 37億円 703億円

また、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フレームワークに基づいた事業活動におけるリスクと機会の開示についても取組みを開始しています。2024年度は、売上高の8割以上を占める製紙事業に関して、ENCOREを用いて生態系サービスへの依存および自然資本への影響が高い項目を整理しました。今後は事業との関連性を考慮しつつ、さらなる開示拡充に向けて検討を進めていきます。

事業における自然資本関連の影響と依存の評価一覧

影響

影響
種別 工程 土地改変 給水 温室効果ガス 汚染
陸域 水使用 GHG 大気 水・土壌
製紙 製造 Very High Middle High
発電 バイオマス High Middle High High Middle
水力 Low Low

依存

依存
種別 工程 供給機能 調整機能
表流水
給水
地下水
給水
バイオマス
投入
水流維持 洪水軽減
製紙 製造 Very High Very High Middle
発電 バイオマス Middle Middle High Low Low
水力 Very High Very High High

生物多様性保全の取組み

井川社有林における生物多様性の保全

当社グループは、民間が日本国内に所有する1団地としては最も広い「井川社有林(24,430ha)」を管理しています。南アルプスの3,000m峰に囲まれ、その中心を大井川が幾多の渓流を集めて南流する深山幽谷の秘境である井川社有林の敷地内においては、湧き出る天然水を使用したウイスキーの製造や宿泊施設の運営などの事業活動を行っています。

井川社有林の約80%は、人工造林ではなく自然更新によって成立したブナ、ミズナラ、シラビソなどを主体とする天然生林から構成されています。当社グループでは、保護すべき重要な生態系に対し、以下の通り保全活動を実施しています。

自然保護地区 14,539ha
林地保全地区 1,504ha
生態系の特徴 標高差約2,230m(960m~3,190m)に及ぶ垂直分布を持ち、南アルプス固有の動植物が分布する原生的自然を維持しています。
具体的な修復・管理活動 登山道の枝払いなどの維持管理、外来植物の種子持ち込みを防止するための靴底ブラシの設置、定期的な巡視による違法行為の抑止などに取り組んでいます。
植生保護 多数の防鹿柵の設置・維持管理を行政などとともに実施し、ハクサンイチゲ、シナノキンバイなどの高山植物をニホンジカによる食害から保護しています。
モニタリング体制 専門家による植生調査に加え、環境教育プログラムや観光客と連携した市民参加型のモニタリング体制を構築、長期的な生態系変化の観測を継続して行っており、得られた観測結果を管理などに役立てています。
保全の方針 企業の責任として、次世代へこの豊かな生物多様性を継承するため、井川社有林の自然環境の保全と経済活動の好循環を目指す「井川モデル」を推進しています。

外部ステークホルダーとの対話・協働

当社は、自社のみでは解決が困難な広域の生物多様性保全課題に対し、その影響を削減するため、地方自治体や研究機関などの外部ステークホルダーと緊密な対話を行い、政策との整合性を持った活動を推進しています。

井川社有林の基本理念や長期運営方針などを定めた井川社有林基本計画の策定や具体的な活動においては、これらステークホルダーのご意見や対話から得られた知見を反映するように努めています。また、山岳団体や地域住民の方々などとの対話を通して井川社有林の経営方針に対する理解促進に努めています。

行政機関との対話

  • 南アルプス国立公園の公園計画(保護計画と利用計画)について地権者として環境省と都度協議を行い、当社グループの裁量の維持と利用者の利便性の向上を図っています。
  • 2030年までに日本政府が掲げた『陸と海の30%以上を保全・保護する目標(30by30)』を達成するために、環境省を含めた産官民などの有志が設立した「生物多様性のための30by30アライアンス」へ2022年に加盟、翌2023年には、井川社有林において環境省の「自然共生サイト(民間の取組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域)」の認定を取得しました。これは、法令で定められた保護地域以外で民間が自主的に保全する区域(OECM)のことで、国際データベースに登録され、日本政府の目標達成に直接的に貢献しています。

地方自治体・研究機関などとの対話・協働

井川社有林の生態系保全のため、地方自治体や研究機関などとの協働を推進しています。

  • 静岡市「南アルプス・パートナーシップ」への参画
    南アルプス・ユネスコエコパークの適切な管理・運営を目指す本パートナーシップに参加し、行政、研究機関、地域住民、他企業との協議を行っています。自治体との対話を通じて、井川社有林の管理に留まらない、南アルプス全体の連続的な生態系の維持に向けた知見、植生調査や野生動物の生息状況に関するデータなどを共有し、南アルプス全体の生物多様性の状況把握と対策に役立てる取組みを開始しています。